第154話 悲嘆-13

「おう、こっちだこっち。そのテーブルは感覚を均等にして並べてくれ」
木野の陣頭指揮のもと、片倉宅のリビングは様変わりしていった。
香織と卓郎はリビングのダッシュボードや壁などを、片倉の遺品や写真でディスプレイしていた。

「香織さん、受け付けはこのあたりに作ってよろしいですか?」
玄関周りを設営していた久保田が香織に邪魔にならないか確認を求めた。

「受付って記帳所ですか?」
「はい、それと会計ですね」
「あっ、お香典は辞退させていただくつもりですから、会計は必要ありません」

「香織さん、お香典はちゃんと受け取った方がいいですよ」
離れたところで様子を見ていた木野が近寄ってきて香織に言った。
「でも、通夜振る舞いもできませんし、後日お返しをするのも大変ですから」

「お香典というのは持ってきてくれた方のお気持ちです。
先ほども似たようなことを申し上げましたが、そのお気持ちを大切にされるのでしたら、
きちんと受け取って、面倒でもお香典返しをされなくては」
「……そうですね。わかりました、木野さん。
 ありがたく受け取ることにします」

香織は笑顔で木野の意見を聞き入れた。

設営が始まって一時間。
奥の部屋も開け放たれた42条のリビングは、一番奥に片倉の亡骸が置かれ、
部屋全体に4人掛けの丸テーブルが数多くレイアウトされた。

壁には片倉の幼少時代から、時計回りに年代が進むように
たくさんの写真が貼られた。
その他に片倉が愛用していた釣竿や、香織がまだ中学生の時に一緒に作った陶器、
愛読書、好きだったお酒なども飾られていた。

「香織さん、それでは今晩はこれで帰ります。
 明日は朝8時からご納棺をして、そのあと花屋が来てお棺の周りをお花で飾り付けます。
 訃報には朝9時よりとしましたので、早い方は9時にはお見えになるかもしれませんが、
 受付や案内はうちの方ですべてやりますので、ご安心ください」

「木野さん、みなさん、本当にありがとうございます。
 明日もよろしくお願いします」
「お疲れ様でした」
「失礼します」

香織と琢朗が見送る中、誠心葬祭の社員たちは片倉宅を後にした。

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