第157話 悲嘆-16

翌日、この日も朝9時から弔問を受け付けた。
「今日は機能より出足が速いですね」
「そうだな」

木野と久保田は受付に座ってそんな話をしていた。
そこへ外で案内係をしていた大島が飛び込んできた。

「木野さん、筒井さんです。筒井さんが来ました!」
「何!」木野と久保田はその場で立ちあがった。

「失礼します」まぎれもなく筒井であった。
「木野君、久保田君、ご苦労さん」

「筒井さん、何しに来たんですか」久保田は明らかに敵意をむき出しにしていた。

「久保田、待て」
木野は久保田を後ろに下がらせた。
しかし、本心では木野も久保田と同じ気持ちだった。
木野は一瞬ためらったが筒井に記帳を促した。

「どうぞ、中へお入りください」記帳を終えた筒井をリビングに案内した。

「木野さん、いいんですか?」
「いいんだよ、久保田。俺はもしここに社長がいたらどうしたかなって考えたんだ。
社長ならきっと筒井さんを迎え入れたと思う。だから通したんだ。
……内心はお前と一緒さ」
「木野さん……」

久保田は木野の辛い思いを察した。
そして久保田も、片倉ならきっと筒井を受け入れたと思った。

「すばらしい葬儀だな。木野君の発想か?」
「……はい」
筒井は献花をし、香織に一言だけ挨拶をしてリビングから出てきた。
「社長は急なことで本当に残念だ。いい人だったのにな……」
「……」「……」

木野と久保田は無言で筒井の顔を見ていた。
何かを口に出せばそのまま止まらなくなりそうだった。

「そういえば、うちの幕張総合式典なんだが、来週からスタートすることが決まったよ。
エリアが違うから競合することはないとは思うが、お互いがんばろうじゃないか」
筒井はそう言い残し、帰って行った。

「久保田、よく我慢したな」
「木野さん、俺、筒井さんと猫田さんを必ず……必ず見返してやりますよ」
久保田はいつまでも筒井が出て行った玄関の方を睨み付けていた。

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