第158話 悲嘆-17

午後1時30分、いよいよ出棺を30分後に控え、最後のお別れ、お花入れが始まった。
棺はリビングの中央に運ばれ、ふたが開けられた。

「香織さん……木野は花屋が用意した切り花を最初に香織に手渡した。
「お父さん……お父さん、誠心葬祭の皆さんのおかげで、素晴らしい葬儀になりましたよ。
思い残すことなく旅立って下さいね。
 今まで本当にありがとうございました」

香織は切り花を片倉の安らかな顔の近くに入れた。
「お義父さん、香織を必ず幸せにしてみせます。どうかいつまでも私たちを見守っていてください」
続いて琢朗がお別れをした。

そして誠心葬祭の社員たち、お花入れに参加したくてこの時間に参列していた片倉の親しい友人たち、
花屋、料理屋などの取引業者の人間たちも片倉にお別れをした。

そして一番最後に木野が切り花を手に棺に歩み寄った。

「片倉社長、あなたはとてつもなく大きな存在でした。
 あなたを失って、我々はいったいどうしたらいいのでしょうか……」

「ううう……社員たちからはすすり泣きが漏れていた」
「……今は先のことを考えるよ湯がありません。
 ただ……ただ……社長にお礼が言いたい……片倉社長、本当に、本当にありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
期せずして社員全員が木野に合わせ、一斉に感謝の言葉を発した。

「うわああ」
「うう、ううっ」

むせび泣きが響き渡る中、
久保田と田中の手で棺に蓋がされた。

二人の目からも大粒の涙がこぼれ落ちていた。
そして若い社員たちが中心となり、棺を表で待機していた霊柩車まで運んだ。

火葬場のお供を久保田に任せた木野は、出棺後、片付けが進む片倉宅の庭のベンチに座り込んでいた。

木野の心の中は、ポッカリと大きな穴が開いてしまったようだった。

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