第160話 船出-2

このことはすぐに木野の口から社員全員に伝えられた。
木野はみんながどんな反応を示すか不安だった。しかし、そんな不安はすぐに払拭されることとなる。
実は社員たちも木野社長の誕生を望んでいたのである。

こうして、誠心葬祭は代表取締役社長木野敬が率いる、
若い社員だけの体制で新たな船出をすることと相成った。

この日、関琢朗、香織夫婦は亡き片倉良造の遺骨を抱いて、港に来ていた。
遺骨を海に散骨するためである。

「関さん、香織さん、おはようございます」
「おはようございます。木野さんにもまたもご面倒をおかけして申し訳ありません」

「とんでもありません。さあどうぞ、こちらへ」
木野は香織の依頼で散骨をさせてくれるクルーザーを手配していた。
「この船ですよ」
「うわあ、立派ですね」
「どうぞ乗ってください」

三人はクルーザーに乗り込んだ。
10人ほどが座れるキャビンには軽食と飲み物が用意されていた。

「キャプテンの井上です。
 木野さんとは何度かご一緒させていただいている仲です」
井上は操縦室からキャビンに顔をだし挨拶をすると、冷蔵庫からシャンパンを取りだした。
木野はこれまでも散骨を希望する遺族からの依頼があると、井上のクルーザーを利用していたため、
井上は散骨のことを熟知していた。

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