第161話 船出-3

「散骨できる沖合までは、1時間半ほどかかります。
 どうぞ、のんびりとクルージングをお楽しみください」

井上は3人にシャンパンを注いだ。
「それでは片倉社長がこの大海原で安らかにご永眠されることを願って、
献杯をいたしましょう」

「献杯!」

3人は片倉の御霊に杯を捧げた。そして、クルーザーがゆっくりと港を離れて行った。
「積算、シドニーへはいつ行かれることになったんですか?」
「はい、来週に行くことが決まりました」
「来週ですか?それはまた急ですね」
「ええ、私の都合で先延ばししてもらっていましたから、致し方ありません」
「でも栄転なんでしょう?おめでとうございます」
「ありがとうございます。向こうで失敗を犯さなければいいのですが」
「私が一緒なら大丈夫でしょ?」
「まあ、そう願いたいものだけど……」
「あら、失礼しちゃうわね!」
「ハハハ」

「木野さんもがんばってくださいね。
 誠心葬祭も今が正念場でしょうから」
「はい、ありがとうございます。いずれ報告会でもやりましょう」
「木野さん、間もなくポイントにつきますよ」
井上が操縦室から会話の弾むキャビンに報告した。
「そうですか。関さん、香織さん、デッキに出てみましょう」木野は二人をデッキに案内した。

「わあ、気持ちいい!」
「見渡す限り海なんて、最高だね」
香織も琢朗も晴天が広がる美しい海に大満足だった。

「さあ、着きましたよ」

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