第163話 船出-4

「本当ですか?木野さん、すごいじゃないですか」
「でも、これからが大変だよ」
「確かにそうでしょうけど……だけど木野さんならきっとやれるわ!
 香織さんだってそう思ったから木野さんに託したんですよ」
「ありがとう美由紀ちゃん。久保田と田中もいるしみんなと一緒にがんばるよ」

木野は一段落ついたところで美由紀を食事に誘っていた。
「美由紀ちゃん、俺、美由紀ちゃんにどうしても話しておきたいことがあって……」
「何ですか?」
「俺、関さんと香織さんを間近で見ていて、夫婦っていいもんだなあ、そうつくづく感じた。
お互いを思いやって、助け合って……パートナーがいると喜びは倍になり、悲しみは半分になるって言うけど、
本当にそう思うよ。」
「そうかもしれませんね。特に年を取っていくと、一人じゃ寂しいですしね」
「それで……誠心葬祭が軌道に乗って、俺にも自信みたいなものがついたら……
そのときは美由紀ちゃんにプロポーズさせてほしいんだ」
「えっ!」美由紀は木野の目を見たまま、固まってしまった。

「あっ、返事はその時でいいんだ。でも、今の俺の気持ちを美由紀ちゃんにも知っていて欲しくて」
木野は恥ずかしさのせいもあって、いつもより早口になっていた。

「美由紀ちゃん?大丈夫?」
美由紀はまだ固まっていた。
「えっ?あっ、ごめんなさい。大丈夫です」
美由紀は我に返ると、今度は顔を赤くして下を向いてしまった。
「……わかりました。私、木野さんが成功してプロポーズしてくれるのを
楽しみに待ってます」
美由紀はさらに顔を真っ赤にし、下を向いたまま言った。

「だから……木野さん、がんばってください」
最後は木野を励ますように顔を上げ、木野の目をしっかり見つめた。

「美由紀ちゃんありがとう。俺、美由紀ちゃんに堂々とプロポーズできるよう、
男を上げてみせるよ、必ず」

二人は手を取り合い、強く握った。
これが二人の指きりであるかの如く……。

木野にまたひとつ、大きな励みができた。

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